Express5800/110Gd あれこれ



NEC Express5800/110Gd 基本装置 (N8100-1279Y)


第1章・はじめに

 昨今の PC サーバのエントリモデルにおける価格破壊はとどまることを知らず、デュアルコアプロセッサに対応した新世代の製品は DELL を筆頭に富士通、ヒューレットパッカードに続き、ついに我らが信奉してやまない日本電気にも期待の星が現れた。Express5800/110Gd (以下:110Gd) である。
電脳技術研究所においては兼ねてよりデュアルコアプロセッサを搭載した省電力PC の導入を検討しており、紆余曲折の末、ついに 110Gd に白羽の矢が立ったのである。


110Gd 内部。

 110Gd は100台限定価格にも関わらず 3/26 までの長期にわたるキャンペーン期間があったため在庫調整が入ってしまい、発注してから到着までに10日ほどを要した。
早速開梱すると、キーボードとマウス、ACコードと Expressbuilderなどが入った付属品箱、そして導電袋に包まれた本体が出てきた。はやる心を抑えきれずにサイドパネルを開けると、GIGABYTE GA-5MMSV-RH と書かれた MicroATX のマザーボードが実装されていた。G model の Express5800 は従来から GIGABYTE 社製のマザーボードを採用していることは承知していたとはいえ、落胆は禁じえない。


問題のマザーボード。ボードの色が緑であるだけマシと言った感じか。


辛うじて 856-126713-001 と言う数字に NEC らしさを感じることが出来る。

 ところでこの GA-5MMSV-RH とかいうマザーボード、本家台湾のサイトにも情報は載っておらず、特注品のようである。似たようなラインナップを探そうにも、そもそも GIGABYTE からは intel 3000 チップセットを搭載した製品自体がリリースされておらず、BIOS アップデートによる劇的なパワーアップ (オーバークロック機能や ECC 設定、メモリタイミング設定) は望めない。
それでも一応現行のアーキテクチャを搭載したマシンが非常に安価に入手できたと言うことで、実戦配備に向けて動くことにする。 


第2章・HDD 搭載

 N8100-1279Y 基本装置は OS レス・ディスクレスモデルである。まずは HDD の搭載から始まった。110Gd には 3Gbps対応のシリアルATA が 4ポート、従来のパラレルATA が1ポート搭載されており、パラレルATA は 5インチベイのデバイス向けに用意されている。
幸い、日立 Deskstar T7K250 (HDT722525VLSA) が余っていたのでこれを搭載して当座をしのぐことになった。
なお、110Gd のオンボードシリアルATA は ICH7R (i82801GR) から提供されており、intel Matrix Storage Technology による RAID 0/1/5/10 機能が利用可能である。


第3章・メモリ換装

 intel3000 チップセットを搭載した 110Gd は、ECC 付き DDR2 PC2-5300 規格のメモリを搭載している。容量は 512MB で、アンバッファタイプである。


標準搭載の 512MB メモリ。SAMSUNG M391T6553CZ3-CE6。

ECC メモリは信頼性が高い分、値段も高く、一般の PC のように簡単に増設することができない。そこで、Non-ECC のメモリを挿して動いたらラッキーと思い、MY28Y に搭載されている 1GB DDR2 PC2-4300 Non-ECC メモリを移植したところ、標準の ECC メモリと混在した環境ではビープ音が鳴って BIOS 画面すら出なかったものの、Non-ECC のみにしたところ正常に動作した。暫くの間 Memtest86 で負荷テストを行ったところ問題はなかったので、以後の拡張については Non-ECC メモリを実装することにした。
さしあたって現在安価に流通している PC2-5300 (DDR2-667) メモリを調達する予定である。
BIOS には ECC の設定に関する項目が無いので、自動認識と思われる。


第4章・ビデオカード実装


今回用意したビデオカード。ATI RADEON X550(左)と nVidia GeForce 7800GT(右)。

 110Gd は 2本の PCI-Express スロットを搭載している。上段が (Slot#1) が x4、下段 (Slot#2) が x8 のスロットで、両者とも物理的なコネクタは x8 タイプを実装している。両者は異なるバスに接続されており、x4 スロットが ICH7R、x8 スロットが i3000 MCH に接続されている。


マザーボードを取り外したところ。MCH にヒートシンクが取り付けられている。

さて、ここで問題となるのが市販されているビデオカードを搭載する時で、広く流通しているビデオカードはコネクタ形状が x16 なので、110Gd には物理的に実装できない。となると、対応策はおのずと決まってくる。

1.x1 スロット対応の製品の導入
 物理的に搭載できるカードを探すのが至極当然のことであるが、いかんせん特殊な部類に属するため、PCI バス対応製品よりも選択の幅が限られるのが難点。
RADEON X1300 や Quadro MVS 440 搭載製品などがある。

2.スロットの後端を切除
 スロット後端部を切除し、x16 対応カードが直接実装できるようにする。
一般のビデオカードを挿し放題。
デメリットはマザーボードを加工するのでメーカー保証が受けられなくなる点。

3.ビデオカードの一部を切除
 現在主流と思われるのが、ビデオカード側のエッジうち、x8 コネクタと干渉する部分の端子を切除して実装する方法。相性などでビデオカードが動作しなかった場合は鉄屑と化してしまうので導入には入念な下調べが欠かせない。

 と、3つの方法があるが、筆者は 2.を選択した。理由は恐らくマザーボードの方がビデオカードより安いであろうと言う事とロープロファイルでない標準のビデオカードをそのまま使用したいと言う強い要望からである。


作業後の写真。電動ドリルの先に研磨用のピットを取り付けて正確に削るだけだ。


x4 スロット。コンデンサがボードのエッジに干渉しないようになっている。


x8 スロット。こちらもコンディショングリーンと言いたいところだが、リチウム電池の
ホルダーが若干出ている感じなので、これもカードの延長線に干渉する部分を削ってある。

今回用意したビデオカードは ATI RADEON X550 搭載カードと nVidia GeForce 7800GT 搭載カードの2種類である。後端を切除した x4 と x8、2つのスロットに実装した動作結果を報告する。


4.1 ATI RADEON X550 (玄人志向 RDX550-LE128CL)

 容量128MB の GDDR でメモリバス64bit、コアクロック400MHz/メモリクロック500MHz、ロープロファイル対応のローエンドモデルである。元々 MY28Y に搭載していたものだが、今回の実験のため取り外して用意した。


x8 スロットでは電池との干渉が懸念されたがそのままでも何とか実装できた。


4.1.1 x4 スロットでの動作

 ビデオカードを挿して電源を投入すると、 X550 のディスプレイ端子から起動画面が出力される。オンボードグラフィックからは出力されない。Windows XP でドライバ導入後、再起動を要求されるのでそれにしたがって再起動を掛けると BIOS 画面が出るタイミングでビープ音が数回鳴ってシステムが停止した。
Windows に限らず、BIOS 設定終了後にリブートしても同様の状態が発生した。つまり「x4 スロットに X550 を挿した状態では再起動できない」ことが判明した。

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V2M 1.10 [ 2007/02/25/01:20:41 ]

 Celeron2.93GHz(F49) 2986MHz x 1 
5MMSV-RH          1.0B
Memory [ 512 MB x 1 ]  Total 511 MB 
GeCube RADEON X550  (Radeon X300/X550/X1050 Series (0x5B63)) 256MB
Driver:6.14.10.6666 800x600x32bpp(60Hz)
Windows XP Professional Service Pack 2 5.1.2600

VRAM -> System Memory (GetRenderTargetData)
- Transfer Rate : 96 MB/sec
- Average CPU Load : 100 %

System Memory -> VRAM (UpdateSurface)
- Transfer Rate : 293 MB/sec
- Average CPU Load : 100 %

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4.1.2 x8 スロットでの動作

 x4 スロット実装時と同じような挙動を示すが、異なる点は再起動が可能であること。Windows はもとより、BIOS 画面や DOS のホットキーを使用しても正常に再起動できた。

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V2M 1.10 [ 2007/02/25/01:16:48 ]

 Celeron2.93GHz(F49) 2991MHz x 1 
5MMSV-RH          1.0B
Memory [ 512 MB x 1 ]  Total 511 MB 
RADEON X550    (Radeon X300/X550/X1050 Series (0x5B63)) 256MB
Driver:6.14.10.6666 800x600x32bpp(60Hz)
Windows XP Professional Service Pack 2 5.1.2600

VRAM -> System Memory (GetRenderTargetData)
- Transfer Rate : 298 MB/sec
- Average CPU Load : 100 %

System Memory -> VRAM (UpdateSurface)
- Transfer Rate : 585 MB/sec
- Average CPU Load : 50 %

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4.2 nVidia GeForce 7800GT (SPARKLE)
 容量256MB の GDDR3 が 256bitバスで接続されており、コアクロック400MHz/メモリクロック1GHz
ビデオカード用電源コネクタを搭載しているが、110Gd の電源ユニットにはそのような電源は用意されていないので付属の変換ケーブルを用いて接続した。


デバイスマネージャ。オンボードの XGI Volari は使用できなくなっている。


4.2.1 x4 スロットでの動作

 ビデオカードを挿して電源を投入すると、7800GT のディスプレイ端子から起動画面が出力される。オンボードグラフィックからは出力されない。Windows XP でドライバ導入後、再起動すると RADEON X550 の時と同様にビープ音が数回鳴ってシステムが停止した。このあたりの挙動は X550 と変わらない。つまり「x4 スロットに GeForce 7800GT を挿した状態では再起動できない」ことが判明した。
nVidia の Graphics Card Information では Bus の項目が PCI Express x1 と表示されていることから、実際の動作は x1 ではないかと推測される。


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V2M 1.10 [ 2007/02/25/01:20:41 ]

 Celeron2.93GHz(F49) 2986MHz x 1 
5MMSV-RH          1.0B
Memory [ 512 MB x 1 ]  Total 511 MB 
GeCube RADEON X550  (Radeon X300/X550/X1050 Series (0x5B63)) 256MB
Driver:6.14.10.6666 800x600x32bpp(60Hz)
Windows XP Professional Service Pack 2 5.1.2600

VRAM -> System Memory (GetRenderTargetData)
- Transfer Rate : 96 MB/sec
- Average CPU Load : 100 %

System Memory -> VRAM (UpdateSurface)
- Transfer Rate : 293 MB/sec
- Average CPU Load : 100 %

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4.2.2 x8 スロットでの動作

 こちらのスロットでは正常に再起動が出来た。BIOS、DOS、Windows どれも再起動できた。nVidia の Graphics Card Information では Bus の項目が PCI Express x4 と表示されていることから、実際の動作は x4 ではないかと推測される。


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V2M 1.10 [ 2007/02/25/01:27:51 ]

 Celeron2.93GHz(F49) 3010MHz x 1 
5MMSV-RH          1.0B
Memory [ 512 MB x 1 ]  Total 511 MB 
NVIDIA GeForce 7800 GT(GeForce 7800 GT) 256MB
Driver:6.14.10.9371 800x600x32bpp(60Hz)
Windows XP Professional Service Pack 2 5.1.2600

VRAM -> System Memory (GetRenderTargetData)
- Transfer Rate : 572 MB/sec
- Average CPU Load : 100 %

System Memory -> VRAM (UpdateSurface)
- Transfer Rate : 585 MB/sec
- Average CPU Load : 57 %

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第5章・おわりに

 上記の結果から、メモリは一般に広く流通している ECC 無しの安価な DDR2 メモリが使用でき、また、ビデオカードの搭載実験においては、x4 スロットは x1 動作、x8 スロットは x4 動作であることが判明した。また、x4 スロットでは再起動時にシステムが停止するという問題も確認された。しかし、x8 スロットでは動作モードが x4 と AGP8x とほぼ同等の速度になってしまうものの、RADEON X550 や GeForce 7800GT といったメジャーなビデオカードが利用できるので、110Gd を一般用途のパソコンとして使用するには十分堪えうる環境を用意できると言える。
 


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