HP ProLiant ML115 あれこれ



HP ProLiant ML115 外観。


第1章・はじめに
 去る3月28日、米国 HP 社より 499ドルの低価格 PC サーバが発表された。シングルソケットのエントリーモデルとして intel3000 チップセットを搭載した HP ProLiant ML110 (以下:ML110) があるが、今回新たに AMD 製プロセッサ搭載のマシンがラインナップに加わった。HP ProLiant ML115 (以下:ML115) である。
ちょうどそのころ、やはり AMD 製プロセッサ搭載のエントリサーバ IBM System x 3105 (以下:x3105) を入手し、その動作検証に明け暮れていた時で、ML115 の発表とその製品仕様を見て PCI Express x16 の文字に戦慄を覚えた私は、日本 HP 社でオーダーが始まるのを虎視眈々と待ち、そして発注した。4月12日のことであった。


開梱中の風景。

 オーダー開始直後だったので、混雑しているとどうなるだろなど気をもんでいたが通常納期である1週間ほど後に到着した。早速本体を開梱すると、まず上段にキーボードや電源コードなどの付属品が、下段には発泡ウレタンとビニールに包まれた本体が詰められていた。IBM と HP はこの様式になっており、エントリレベルと言えど手厚い梱包がなされているのに対し、DELL の競合機種・PowerEdge SC はビニール無しの状態で入っている。また、NEC は発泡ウレタンの代わりにダンボールを何度も折り曲げて整形したものに最小限の発泡ウレタンが取り付けられていると言った具合に簡素化されている。もっとも、NEC の場合は98サーバの頃から変わらない方法ではあるが・・・

第2章・ML115 とは


HP ProLiant ML115 内部。

 AMD 製プロセッサを搭載する ML115 は、チップセットに NVIDIA nForce 5 系列である nForce 570 SLI を採用しており、競合する IBM x3105 ( nForce4 / nForce 2200 Professional) よりも 1世代新しくなっている。また、ML115 は標準で nForce 570 チップセットによる NVIDIA RAID 機能をサポートしており、オンボード シリアル ATA インタフェースにおいて RAID 0,1,5 構成が可能となっている。


RAID のコンフィグレーションは BIOS にて行う。

プロセッサはシングルコアの Athlon XP 64 3500+ (2.2GHz) かデュアルコアの Opteron 1210 (1.8GHz×2)、1216 (2.4GHz) からチョイスできる。Socket AM2 に対応する AMD 製のデュアルコアプロセッサには Athlon 64 X2 や Turion があるが ML115 のラインナップにはない。
マネジメント機能が充実しているのも ML115 の特徴の1つで、ServerEngines というチップに、グラフィックスとマネジメント機能 (IPMI) が搭載されている。さらに、専用スロットにオプションカードの Lights-Out 100c リモート マネジメント カード を実装することにより、ミドルレンジサーバ同様の機能を付加することができる。

ServerEngines(TM)チップセット。IPMI・グラフィック・ビデオメモリが1チップに統合されている。

 そして特筆すべき点が PCI Express x16 対応スロットを持っているという点である。これは特価 PC サーバ使いが待ち望んでいた仕様だと言っても過言ではない。ついにスロットやビデオカードを削る必要が無くなったのである!
IBM x3105 で成し得なかった夢を叶えられるかも知れないマシン、それが HP ProLiant ML115 なのだ。


中央の長いスロットが PCI Express x16 スロット。
下段にある x8 らしきスロットは ILO 専用スロットである。
(※シルク印刷にあわせたので実際は上下逆)


デバイスマネージャ。PS/2 ポートは内部で USB に変換されている。


そうそう、このマザーボードは FOXCONN 製なのだ。


CPU-Z の結果はこちら
(別ウィンドウで開きます)

第3章・プロセッサ
 ML115 には前述のとおり シングルコアの Athlon XP 64 3500+ (2.2GHz) かデュアルコアの Opteron 1210 (1.8GHz×2)、1216 (2.4GHz×2) の3モデルがラインナップされており、Socket AM2 に実装されている。
CPU の冷却機構は IBM x3105 のヒートシンクだけのパッシブ方式とは異なり、ファン付の大型のものがケースにネジ止めされている。システムを稼動させると判るが、ML115 最大の騒音発生源がこの CPU クーラーである。ちなみにファンガードを撤去してみたが音量は変わらなかった。


左:CPUファンを取り外したところ。
右:ファンガードを外したが効果なし。残念・・・

 さて、ML115 には Athlon 64 X2 モデルがないのだが、90nm の Athlon 64 X2 4200+ (2.2GHz×2) と 65nm の 3600+ (1.9GHz×2) で試験したところ、BIOS 及び OS での認識・運用ともに何ら問題なく動作した。


BIOS の CPU Configuration 項目。最下行に妖しげな文字列が・・・(後述)


Windows XP 上のシステムのプロパティ。

 BIOS の CPU Configuration 項目を見ていると、最下行に "AMD Overclocking Configuration" というステキな文字列があるではないか。この項目では何と CPU の動作倍率と駆動電圧を手動で設定できるのだ。残念ながら FSB を変更したり CPU の最大倍率を超える設定はできないのだが、定格より低い電圧で駆動することが出来、"そういうツール" を使わなくても済むという点でポイントが高い。


かなり太っ腹な項目。是非有効に活用したい。


65nm プロセスの新コア "Brisbane" も正常に動作。

第4章・メモリ
 標準搭載されているメモリは DDR2-667 ECC Unbuffered であるが、チップセット自体は DDR2-800 をサポートしており、実際に 800 に対応している。また、Non-ECC メモリを自動判別する機能を持ち、Non-ECC メモリの使用が可能である。現在、Transcend の JM388Q643A-8 などを使用しているがすこぶる快調に動作している。
なお、最大搭載容量は 2GB×4 の 8GB である。


標準搭載のメモリ。HP P/N:417440-051。
Micron MT9HTF6472AY-667D4、鉛フリー製品。

第5章・ハードディスク
 ML115 は標準で 80GB の HDD を搭載している。インタフェースはシリアル ATA で、最大4台搭載可能である。ただし標準搭載以外のケーブルは付属していないので、自前で増設する際は別途必要になることに注意されたい。
また、本機はチップセットの nVIDIA RAID 機能により、RAID 0/1/5 をサポートしている。RAID 機能を有効にした場合は別途デバイスドライバーが必要(OSセットアップ時もフロッピーディスクが必要)になる。


左:マザーボード上の シリアル ATA ポート と IDE コネクタ。
右側に内蔵 USB デバイス用コネクタが実装されているのがわかる。
右:標準搭載の80GB HDD。HP Spare P/N:399967-001 / Seagate Barracuda 7200.9 / ST3808110AS。

第6章・グラフィック
 本稿のメインイベント、ビデオカード大実装大会がやって参りました。と言う事で今回用意したビデオカードは下記の5種類である。結果から言うと全て定格の x16 で動作した。あーつまんない(ぉぃ

・ATI RADEON X550
・ATI FireGL V3100
・NVIDIA GeForce PCX 5900
・NVIDIA GeForce 7800GT
・S3 Chrome S27


ビデオカードの動作検証の詳細はこちら
(別ウィンドウで開く予定だが準備中)

HDBENCH の結果はこちら
(テキストファイル・暫定版、別ウィンドウで開きます)

ビデオメモリ転送速度測定 V2M の結果はこちら
(テキストファイル・暫定版、別ウィンドウで開きます)

 人間とはつくづく欲の深い生き物で、折角だから下の x8 スロットを削ってビデオカードを実装してみた。
結果は全滅。x3105 と同様に全く認識しなかった。カードエッジを x1 相当にマスキングしても同じ結果で、結局 x8 スロットに関しては完全に門前払いであった。終わった・・・SLI の夢・・・


PCI Express スロットを削るのが目的のような気がしてきた・・・
削らなくて済む時代が来たのかと思うと感無量である。


第7章・ネットワーク
 ML115 にはオンボード PCI Espress 接続の NC320i Gigabit Server Adapter が 1基搭載されている。チップは Broadcom BCM5721 である。システムにはこれとは1番違いの MAC Address が割り当てられており、オプションの Lights-Out 100c を搭載することで使用可能になる。


BCM5721(左)とマザーボードに貼付された MAC Address(右)。

第8章・拡張カード
 ML115 には 32bit PCI スロットが2本、PCI Express x8 対応スロットが 1本、x16 対応スロットが 1本搭載されているが、x8スロットでビデオカードが認識されない事象を確認している以外、PCI サウンドカード(YMF724)、PCIビデオカード (VooDoo 2000) 等の動作を確認している。その他のカードについては動作検証が済み次第掲載する予定である。

第9章・おわりに
 本稿の ML115 や以前執筆した IBM x3105 は、元々のパフォーマンスの高さのみならず、自作PCパーツを組み合わせることによって、非常に安価で高性能なマシンにチューンアップすることができる。そういった意味では [マネジメント機能が充実したパソコン] と位置付けてPCライフの中核に据えても十分耐え得る素質を有していると思った。ところが、x3105 において PCI Express 対応ビデオカードを全く認識しないという想定外の事態が発生してしまったのでメインマシンとしての道は断たれてしまったが、当方ではそれなりの PCI ビデオカード(ATI RADEON 7000) を実装して活躍の場を与えられている。
 それに対して ML115 はデュアルコアプロセッサへの換装が可能であるのはもちろんのこと、x16 動作が可能な PCI Express スロットを備えており、ビデオカードとサウンドカードを搭載すれば安価にサーバ機の恩恵にあずかることができる。当然メインマシンとしての用途に十分堪えるのだが、電脳技術研究所において最大の問題はベンダが NEC でないという点。日電のパソコン以外はメインマシンになれないという慣習のため、ML115 はそのポテンシャルを認められながら動画エンコード用などの特定用途PC に配属されてしまった。x3105より、むしろ何も障害がない ML115 の方が不幸だったのである。
気になる動作音だが、筆者が所有するエントリーサーバの中で順序付けをすると下記のとおりと思われる。
(静か) x3105 < 110Gc,110Gd < ML115 (うるさい)
ただ、あくまで順位付けしたならばという想定なので、 x3105 と ML115 の間には越えられない壁があるかというとそうではなく、静音化改造次第によっては改善できることを付け加えておく。
 導入から公開まで随分時間が経ってしまったが、本稿が購入の際のアドバイスになれば幸いである。次は何にしようか・・・


参考文献

HP ProLiant ML115
http://h50146.www5.hp.com/products/servers/proliant/ml115/index.html

HP ProLiant ML115 用 Microsoft Windows Server 2003 (32bit) ファイルライブラリ
http://h18007.www1.hp.com/support/files/server/jp/locate/69_6371.html

nForce 500 Series for AMD
http://www.nvidia.com/page/nforce5_amd.html

AMD Athlon 64 Processor Tech Docs
http://www.amd.com/jp-ja/Processors/TechnicalResources/0,,30_182_739_7203,00.html

HP Lights-Out 100
http://h50146.www5.hp.com/products/servers/proliant/management/lmc-lightout100_sh.html

Intelligent Platform Management Interface
http://developer.intel.com/design/servers/ipmi/index.htm



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