IBM System x 3105 あれこれ



IBM System x Series 3105 (4347-22J)


第1章・はじめに

 IBM System x Series 3105 (以下:x3105) は、AMD64 アーキテクチャを採用した PCサーバのエントリーモデルである。intel プロセッサが席巻する PCサーバ市場において、DELL、IBM、hp などからようやく AMD プロセッサがラインナップに加わってきた中で、x3105 はその先陣を切ってバリュープライスを展開した。
とは言え、他社の intel プロセッサ搭載サーバが2万円前半でのキャンペーンを大々的に行っているさなか、3万円近い価格と intel プロセッサでないという先入観から筆者は購入を躊躇っていたが、周辺諸国からの強い要望に押されて今回のレポートと相成ったわけである。
x3105 は世界中で販売されており、米国IBM のサイトから情報を得ることができる。


 さて、あっさりと x3105 が到着したわけだが、普通のデスクトップPCと同じような箱に入っており、開梱すると、まずキーボードの箱と電源コード/マウスが入った箱が現れ、それらを挟む白い緩衝材に本体が詰まっている。本体は厚めのビニールに入っており、プラスチック系のテープで封をされている。DELL や NEC のサーバが裸同然で箱に入っているのに慣れていた筆者は「さすが IBM・・・」と思わず感嘆した。


箱。普通のパソコンとなんら変化無く丁寧に梱包されている。


本体内部。右開きの造りになっている。


第2章・x3105 とは


x3105マザーボード。MSI とか GIGABYTE などのロゴはなく、IBM 謹製のようだ。

 x3105 は BTX ファクターを採用したミニタワー型サーバで、チップセットに NVIDIA 社の nForce Professional 2200 MCP を搭載する。IBM x シリーズ の型番が 3000番台に移行したことに伴い、x3105 より前にラインナップされていた下位で xシリーズ最廉価モデルの x100 と上位モデルの x206m が生産終了となり、x3105 は xシリーズの最廉価モデルとなった。とはいえ、OS 無しモデルの標準価格は \65,100 (2007年2月現在) と、他社のエントリーモデルよりも割高である事は否めない。
 ところが、これを自作パソコンのベースモデルとして考えた場合、プロセッサはコストパフォーマンスの高い AMD Athlon 64 X2 に換装でき、メモリも ECC 無しが使えるなど後述する項目を見ていただけばわかるが魅力満載のパソコンに変化する。実は筆者は一通りの検証作業を終えるまでは随分高い買い物をしてしまったと後悔していたが、実際に運用すべくパワーアップを開始してみると案外そうでもない気がしてきている。
ただ、ケースは地金の処理がイマイチだったり、BTX のため汎用性に欠けるうえにリアの I/O パネルがケース一体だったりするところがマイナス要素だが、それよりもその他のギミックがかなり凝った造りになっており、内部パーツへのアクセスは非常に行いやすく出来ている点を評価したい。


ケース背面。いかにも廉価モデルという雰囲気が漂っている。


青いプラスチック部品にはロック機構が備わっており、作業中に手を煩わせることがない。

最後に一点、電源を投入する前に電源ユニットの電圧を 230V から 115V に変更するのをお忘れなく。


恐るべしワールドワイドモデル・・・


第3章・プロセッサ


ヒートシンクと CPU ソケット。

 x3105 は プロセッサ・ソケットに Socket AM2 を採用しており、シングルコアの Athlon 64 3500+ (2.2GHz) 搭載モデルと デュアルコア Opteron 1210 (1.8GHz) 搭載モデルが存在する。プロセッサ・ナンバーと実クロックの間にかなりの隔たりがある印象があるが、HDBENCH で計測した結果、整数・浮動少数点演算ともに Celeron D 341 (2.93GHz) の2割増程度の数値だったので、誇張ではないことが明らかになった。


HDBENCH の結果。


プロセッサ表記は ADA3500IAA4CN。Rev.F2、TDP は 59W。


CrystalCPUID での情報。


 x3105 には Athlon 64 X2 搭載モデルが存在しないのだが、4月9日の価格改定で大幅に AMD プロセッサの価格が下がったので、標準装備と同クロック (2.2GHz) のデュアルコア版である Athlon 64 X2 4200+ への換装を試みた。なお、今回試用した 4200+ は TDP65W の 90nm プロセス版である。
 プロセッサを換装するだけで BIOS で正常に認識され、Windows XP では ACPI マルチプロセッサの HAL に自動的に変更され、再起動後には物理2プロセッサとして動作するようになった。もちろんその様子はタスクマネージャの CPU グラフで確認することができる。



この 4200+ は Windsor コアであり、現在流通している 65nm プロセスのプロセッサは 65nm の Brisbane コアに移行し、それにともなうラインナップ変更によって 2.1GHz の 4000+ の上位は 2.3GHz の 4400+ となり、2.2GHz の 4200+ は消滅している。


第4章・メモリ

 x3105 は PC2-5300 (DDR2-667) 対応のアンバッファ ECC メモリを搭載している。容量は 512MB で最大 8GB (2GB×4) となっている。色分けされた2バンク4ソケットが実装されており、デュアルチャネルに対応している。
増設単位は1枚だが、同一バンク同容量であること、3枚搭載不可など方法が変則的なので、詳細についてはユーザーズ・ガイドを参照されたい。


メモリソケットはバンクごとに色分けされている。


標準実装の 512MB メモリ。SAMSUNG M391T6553CZ3-CE6。


BIOS の設定項目。ECC に関して詳細な設定が可能である。

 昨今のPC用メモリの値下がりは激しく、廉価サーバでも ECC 無しメモリが使える機種が存在するなど、条件さえ許せば安価にメモリを増設できる状態になっていることから、この x3105 でも ECC なしメモリが使えるかどうか興味深いところである。だがこの問題はあっさりと解決した。BIOS の [Advanced Setup] の項目に [ECC Mode] の設定項目が存在したのである。デフォルトで [User] になっている値を [Disable] に変更すると ECC 無しメモリが使用できるようになる。ただし、何らかのトラブルで CMOS 値がクリアされてしまうと再び ECC 付きメモリを要求され、POST 画面で CP:62 が出た後はシステムが停止してしまい BIOS の設定に辿り着くことができなくなるので、速度や容量はともかく ECC 付きメモリは保有しておく必要がある。なお、256MB PC2-4200 (DDR2-533) ECC アンバッファメモリ (NEC Express5800/110Gc より転用) でも動作したことを付け加えておく。


ECC を Disable にせずに Non-ECC メモリを実装すると、写真の画面のまま
システムが停止してしまう。もちろんこの先の BIOS セットアップへは進めない。

 また、同一バンクに異なる容量のメモリを実装した場合、仕様では非サポートとあったが、全容量を認識して使用できた。たとえばソケットの番号が若い順に 256MB ECC・512MB ECC・1GB Non-ECC の3本を搭載すると 1792MB、256MB ECC・1GB Non-ECC・1GB Non-ECC・512MB ECC の4本を搭載すると 2816MB といった感じである。Non-ECC メモリを混在させるときは必ず BIOS で ECC を [Disable] に変更することをお忘れなく。


(左)今回用意したメモリ群。(右)IBMもビックリな混在構成。しかも3枚実装。


なかなかどうして、中途半端な構成でも上手く動作するものである。


第5章・ハード・ドライブ


HDS728080PLA380。eServer のロゴが入った IBM 純正品である。

 筆者が購入した x3105 には日立GST 製 Deskstar 7K80 HDS728080PLA380 (キャッシュ8MB) が搭載されている。ドライブのファームウェアは IBM 独自のものが書き込まれており、Windows XP 上のデバイスマネージャで確認できる。


デバイスドライバを全て導入した直後のデバイスマネージャとシステム情報。

 x3105 はマザーボード上にパラレル ATA コネクタを1基、3.0Gbps 対応のシリアル ATA コネクタを3基 (パターンは4基分) 搭載している。パラレルATA は標準搭載の CD-ROM ドライブと5インチベイデバイス用となっており、80芯の 1:2 ケーブルが接続されている。
オンボード RAID 機能は搭載しておらず、オプションカードの ServeRAID 7t SerialATA コントローラによって実現可能である。


SATA3 ポートはコネクタこそ搭載されていないものの、周辺のチップ部品は
実装されているのでコネクタを付ければ、あるいは・・・?



第6章・グラフィック


オンボードの ATI ES1000。左に 16MB のビデオ・メモリを搭載している。
HY5DU561622ETP-5 は 256Mbit gDDR SDRAM である。ん?32MB!?

 x3105 はオンボードで ATI ES1000 を搭載している。カタログ表記上は SVGA となっているが、ビデオ・メモリーは 16MB なのでそれ以上の高解像度・多色表示が可能である。チップセットの nForce Professional 2200 は NVIDIA SLI に対応しているので、やはりここは 2本の PCI-Express スロットに GeForce を挿してソレをやるしかあるまい。
と言うワケで早速スロット後端を掘削した。x3105 のスロットは軟らかいプラスチックを使っているせいか、削りカスがスロット側にまとわりついてカッターで削ぎ落とす作業が必要だった。


作業後の PCIe スロット。どちらもカードのエッジが干渉することなく実装可能だ。

 さて、PCI Express 用ビデオカードの動作実験を行うにあたり、下記の3種類のビデオカードを用意した。

1.NVIDIA GeForce 7800GT (SPARKLE 256MB GDDR3)
2.ATI RADEON x550 (玄人志向 RDX550-LE128CL)
3.S3 Chrome S27 (DIGICOOL 128MB)


今回用意したビデオカード群。左から GF7800GT、x550、S27。


それでは諸君、実験開始だ!(CV:清川元夢)

 1〜3までのビデオカードを PCIe スロット1と2に挿したがボード自体を認識してないらしく、Windows XP のデバイスマネージャ上からも見つからなかった。x3105 の BIOS に VIDEO の設定項目があり、そこで [AUTO]、[On-Board VGA]、[PCIE Slot]、[PCI Slot] を選択することが出来るので、万全を期すため [PCIE Slot] に設定を変更して再起動するも、オンボード VGA からしか出力されず、BIOS の設定も [AUTO] に戻ってしまっていた。どのカードも同じ挙動を示したので、x3105 の PCI Express スロットでは x16対応ビデオカードは動作しないと思われる。また、どうにかしてオンボード VGA を無効に出来ないかと調べたところ、PCI Interrapt Rooting の項目で IRQ を Disable に設定できたのでもしやと思ったが POST 終了時に ES1000 の IRQ が設定されていない旨のエラーが出るだけだった。
 念のため、PCI Express x1 相当の帯域に制限するために、カードのエッジをマスキングテープで塞いで同様の実験をしたが、結果は変わらずじまいであった。


Video Controller の項目に優先デバイスが表示されている。
本来ならここに PCI Express に実装したデバイス名が出ると思われる。


オンボード VGA は Disable に出来ないようだ。


切り欠きから7本を残してマスキング。これで x1 のビデオカードと変わらないはずだが・・・


第7章・ネットワーク


オンボード LAN の Broadcom BCM5721FKB。

 x3105 はオンボードで Broadcom BCM5721 を搭載している。PCI Express 接続の Gigabit LAN だが、Windows 用ドライバの設定項目を見る限り、ジャンボフレームに関する記述がなかったのでサポートしていない可能性が高い。


最新ドライバ 10.24 導入時のプロパティ。だが MTU に関する項目はない。


第8章・拡張カード
 さて、ことごとくビデオカードを拒絶している x3105 の PCI Express スロットだが、念のため一般的な I/O カードを実装して本当に動作しているのかどうか探ってみた。今回用意した "一般的な I/O カード"は 次の2枚である。

1.Gigabit Ethernet ボード (玄人志向 GbE-PCIe)
2.シリアルATAII + IDEボード (玄人志向 SATA2|2+IDE-PCIE)


左:GbE-PCIe、右:SATA2|2+IDE-PCIE。

 これら2枚のカードは特に BIOS の設定を行う必要はなく、2枚とも実装した状態でもきちんと動作した。 GbE はオンボードの方が高品質なので必要ないが、ストレージのカードは RAID 機能も搭載しているので、オンボードの S-ATA ポートに代わって RAID 機能を活用できる。SATA2|2+IDE-PCIE は ROM を搭載しており、POST の終了後にメッセージが出るのでその動作を肉眼で確認できる。
この他の I/O カードとしては、IEEE1394 や ビデオキャプチャ、ExpressCard スロットアダプタなどがあるので機会があれば紹介する予定だ。特にビデオキャプチャはビデオカードとの連携が不可欠なのでどのような挙動を示すか興味深いところではあるが・・・


折角スロットを削ったのに・・・



第9章・おわりに

 年度末の各社 PC サーバ特価セールで廉価サーバが大々的にピックアップされたが、その中でも x3105 だけは情報が極端に少なく、その素性について明らかにする必要を感じて今回の導入になったのだが、本命の PCI Express 対応グラフィックカードの動作実験がことごとく失敗するという不測の事態に陥り、解決の糸口をつかめないまま鉄屑と化す危険性があったが、さしあたって用途が見つかったので PCI のビデオカードを実装して急場をしのぐことになった。
 グラフィック性能にさえこだわらなければ、アップグレードパーツを安価に調達できるため、トータルでのコストパフォーマンスは十分に高いと考えられる。特にプロセッサに関しては intel の同スペック製品の半額以下で入手できる点は非常にありがたい。
 本稿執筆中に米国hpサイトで ProLiant ML115 なる AMD プロセッサ搭載機の新製品(4月4日)を発見した。これが日本に上陸した際は新たな特価サーバ祭りが始まることを期待してやまない。参考までに 499ドルからだそうだ。


参考文献

IBM Sytem x 3105 Server
http://www-06.ibm.com/systems/jp/x/tower/3105/

IBM System x 3105 Type 4347 ユーザーズ・ガイド
http://www-06.ibm.com/jp/domino04/pc/support/Sylphd10.nsf/jtechinfo/SYM0-008E104

nForce Professional
http://jp.nvidia.com/page/nforce_pro.html

AMD Athlon 64 Processor Tech Docs
http://www.amd.com/jp-ja/Processors/TechnicalResources/0,,30_182_739_7203,00.html

hynix HY5DU561622ETP
www.hynix.com/datasheet/pdf/dram/HY5DU561622ETP(Rev1.0).pdf



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